結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
「結婚を前提に付き合ってほしい気持ちは変わっていない。だけど、里乃子に無理は強いたくない。ゆっくりでいいんだ。俺と一緒にいてもいいと思ってくれるなら……」
「傑さんと一緒にいたいです」

私はひどく狼狽しながら、かすれた声で言った。

「まだ、自分の気持ちがちゃんとわからないんです。でもあなたと一緒にいたい」
「里乃子」

榛名先輩の手が私の腕に触れる。私は彼の顔を見上げる。お互い顔が赤いし、目が潤んでいる。

「駄目だ、距離を取ってくれ。このままじゃ、おまえを襲ってしまう」

そう言って、触れた手を離す榛名先輩。私は逆に引いてしまおうとする彼の腕をつかんだ。
自分でもこんなことができると思わなかった。だけど、行かないでほしい。
先輩の綺麗な瞳が揺らぎ、私を見つめる。私は見つめ返し、彼に顔を近づけた。きっと、私から距離を縮めないと駄目。

私たちはそのまま初めてのキスをした。
触れるだけの優しいキス。
顔と顔を離すと猛烈に恥ずかしくなり、ふたりでうつむく。

「里乃子、好きだ」

先輩は真っ赤な顔をしつつ、愛の言葉をくれる。

「コーヒーを飲んだら帰るよ」
「はい」

このままこの部屋にふたりでいたら、どうなってしまうか、私も彼もなんとなくわかっていたから。

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