結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
「ゆうべはすまない……。いや、俺はもう謝らないぞ。好きな女に好きだと言われたから好きにしただけだ」

先輩はぼそぼそ言ってから、恥ずかしそうにシーツと枕に顔を埋めてしまった。
首まで赤いんですけど、この人。

「傑さん……」
「なんだ、行永」

枕の中から応える声。私は榛名先輩の後頭部をぺんぺん叩いて抗議した。

「名前で!呼んでくれないんですか?」
「……」
「エッチしてるとき、たくさん呼んでくれたじゃないですか!」

先輩は観念したのか、恥ずかしかったのか消え入るような声で、呼んだ。

「里乃子」

その声に、私は自分が身も心も榛名先輩のものになったのだと実感し、ほおとため息をついた。


それから、私たちはお湯を沸かしてコーヒーを飲んだ。榛名先輩の部屋は殺風景というか、あまり物のない白を基調とした部屋だ。ベッドに腰かけ、ぼんやりとティーカップを包む。
私、榛名先輩と両想いになっちゃったんだ。

榛名先輩がジーンズだけはき、上半身裸のまま私の横に座った。
昨夜はちゃんと見られなかった腹筋が見え、噂通りの細マッチョぶりにいまさらドキドキする。かく言う私は、昨日来ていたブラウスを羽織っただけだ。

「避けていてすまなかった」
「いえ、傑さんを傷つけたの、私だから」
「俺なりに、里乃子を忘れようと必死だった。無理に交際してもらっていた自覚はあったからな」

榛名先輩は静かに笑う。寂しい想いをさせていたことに私は胸が疼いた。

「最初に結婚を前提にって言っただろう。実は、俺も下心があったんだ」
「え?」

榛名先輩は言う。

「昨日会った婚約者の咲花(さいか)、彼女と約束したんだ。お互いに結婚する相手を別に見つけて親に紹介しようと」
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