アンサンブル ~翔

家にいる間は 花を離さない翔。

お風呂に入れて 寝かし付けて 翔が リビングに戻ってくると 奈緒は 笑ってしまう。
 

「何、笑っているの。」

翔の前に コーヒーを置く奈緒に、翔が聞く。
 

「だって。翔、こんなに 子煩悩だと思わなかった。」

奈緒は クスクス笑って答える。
 


「うん。自分の子供って こんなに可愛いのかな。それとも 花だから、可愛いのかな。」

コーヒーを啜りながら 翔が言う。
 

「花ちゃん、性格もいいから。」

奈緒が答えると、翔は頷く。
 


花を産んだとき 奈緒は 難産で苦しんだ。

しばらく 出産する気になれなかった奈緒。


花が 3才を過ぎた頃から 避妊を止めたけれど 奈緒は まだ妊娠しない。

翔も奈緒も、花がいるから 二人目の子供の為に 不妊治療をする気には なれなかった。
 

「親父が子煩悩だったのって、俺達が可愛くて、離せなかったんだなあ。」

翔の言葉に
 

「うん。親って、こんなに 子供が可愛いんだね。」

奈緒も しみじみと言う。
 
 

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