アンサンブル ~翔
ふと翔は、同じように もがいている奈緒に気付く。
医師になって 一年が過ぎる頃。
奈緒の親も 医師ではなかった。
「あれ、藤谷さん。今日も泊まり?」
休憩室で 文献を開いている奈緒に、翔は聞く。
「うん。ちょっと 調べたいことがあって。」
売店のおにぎりを 頬張りながら 奈緒は 答える。
「廣澤君も、よく泊まっているよね。」
カップ麺ができるのを 待っている翔を見て、奈緒が笑う。
「うん。調べれば調べるほど、疑問が出てきて。キリがないよね。」
カップ麺をすすりながら 翔が答える。
奈緒は、ハッとした顔で
「廣澤君もそう思う?」
と聞き返した。