アンサンブル ~翔
「中村君は、家が病院だから。育った環境が違うと、考え方って 違ってくるよね。」
奈緒も 少し笑って言う。そして、
「廣澤君はいいよ。実家が お金持ちだし。うちの親なんて、借金して 私を医大に行かせてくれたから。早く 一人前になりたいのに。」
と奈緒は 俯いた。
「俺だって同じだよ。家の仕事、拒否したんだから。俺も 早く一人前の医師に なりたいよ。」
翔も言う。
翔は 自分も奈緒も 責任感が 空回りしていることに気付く。
「どうなるんだろうね、私。」
ポツンと言う 奈緒の言葉に、
「なるようにしか ならないから。気長にやろうよ。」
翔は 奈緒に言いながら 自分に 言い聞かせていた。