アンサンブル ~翔
「まだまだ。全然駄目だよ。」
翔が 苦笑すると お祖母様は、
「速水先生、翔のこと 褒めていたわよ。とっても努力家だって。」
と誇らしげに言う。
「努力しているようじゃ 駄目なんだ。センスの良い奴は 努力なんかしなくても 体が動くから。」
翔は 自嘲気味に言う。
「私は、努力もしないお医者様には、診てほしくないな。センスが 通用するのは 最初だけよ。地道に努力していると、フッと 視界が開ける時がくるのよ、必ず。」
お祖母様の言葉は、翔の気持ちを 切り替えるきっかけになった。
「そうかな。俺もいつか 自信を持って 診察できるようになるのかな。」
今まで、誰にも言えなかった 弱音を吐いている翔。
不思議なほど 素直な気持ちになって。