アンサンブル ~翔

病気のお祖母様を 励ます立場なのに 翔が お祖母様に 励まされているなんて。
 


「大丈夫。絶対、翔は 良いお医者様になるよ。お祖母ちゃんが保証する。」


お祖母様は 強い口調で言ってくれる。


翔は苦笑して
 

「そうだね。俺が医師になるの、お祖父様も 楽しみにしていたもんね。」


と言う。
 


「お祖父ちゃん 生きていたら きっと 注射の練習台に なってくれたわよ。」


お祖母様は 楽しそうに笑う。
 

「あー、わかる。お祖父様“ 翔、俺の腕で採血の練習をしなさい”って言いそう。」


翔も声を出して笑う。
 

お祖母様は いつも笑顔で 医師や看護師達に 接していた。


いつも 丁寧にお礼を言って。


多分 自分の病状に 気付いていたのに。


接する人みんなを 思いやって。


強いからこそ 優しくなれることを、翔は お祖母様の 最期の時間を見て 学んだ。

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