アンサンブル ~翔
家族みんなが 少しずつ 心の準備を始める頃から、翔は毎日 お祖母様の病室に泊まった。
眠っている時間が 増えたお祖母様。
翔は そっと病室に入り、お祖母様の脇で 静かに本を開く。
「翔。居てくれたの。」
そっと 目を開けたお祖母様が言う。
「ごめん、明るかった?」
翔が聞くと
「大丈夫よ。今、お祖父ちゃんが お医者様になった夢を見ていたわ。」
とお祖母様は 笑って言う。
翔は、静かに お祖母様の足を さすりながら、
「へえ。俺とお祖父様が 一緒になっているね。」
と笑顔で言う。