アンサンブル ～翔

「ねえ、お兄ちゃん。俺、お父さんの会社を　継がなくてもいいかな。」

翔は樹に言う。
　
「なんで。」

樹は　驚いた顔をする。
　

「俺、医師に　なりたいんだ。なれるかどうか、わかんないけど。」

翔が答えると、樹は　明るい笑顔になる。
　

「そうか。翔、成績いいからな。いいよ、お父さんの会社は、俺が継ぐから。翔は　頑張って医師になりなよ。」

と樹は　心強い言葉で、翔を　励ましてくれた。
　

「でも、お兄ちゃん、お父さんと　智くんみたいに、俺と一緒に　会社を継ぎたいんじゃない。」

翔は　気になっていたことを　言葉にする。
　

「翔と一緒の方が　心強いけど。いいよ、壮馬もいるし。翔は　医師になりなよ。弟が医師って、カッコいいからさ。」

と樹は笑う。
　

「うん。頑張ってみるよ、俺。」

翔も笑顔で答えた。