アンサンブル ~翔

「お祖母ちゃんと話すと 癒されるとか。元気が出るとか。あの頃 看護師達の間で 話題になっていて。私 研修に 行き詰っていたから すがるような思いで お祖母ちゃんの病室に行ったんです。」


奈緒は 当時を思い出し、少し 目を潤ませながら 話し続けた。


 
「担当でもない私を お祖母ちゃん 不審な顔もしないで。すごく 優しく 受け入れてくれて。翔さんと同期だって言うと 翔さんの 子供の頃のこと 話してくれて。」


奈緒の言葉を聞いて、
 

「その頃 まだ翔と 付き合っていなかったの?」

と父は言った。


翔と奈緒は 同時に頷いて、
 


「奈緒から その話しを 聞いた後だよ。付き合い始めたのは。」

と翔は言う。
 


「私 お祖母ちゃんに すごく色々 話しちゃって。誰にも 言えなかったこととか。弱音や泣き言も全部。お祖母ちゃん いつも真剣に 私の話し 聞いてくれて。温かくて、優しくて。私 本当に救われました。今 私が医師でいるの お祖母ちゃんのおかげなんです。」



と奈緒は 声を震わせた。
 

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