アンサンブル ~翔
「そのことなんだけどさ。二人は 開業する気はないの。」
と樹が 改まった口調で言った。
翔と奈緒は、顔を見合わせる。
「いずれは 開業したいと思っているよ。」
翔は 奈緒と頷き合って答える。
「ずっと大学病院で 最新の研究を続けたいとか 教授になりたいとか。そういう訳じゃないんだね。」
樹は言う。
「兄貴、テレビの見過ぎ。大学病院の教授なんて そう簡単に なれないから。」
翔は 笑いながら言う。
「確かに、大学病院は 難しい病気に 携われて勉強にはなるけど。研究を続けるだけが 医師じゃないからね。開業して 地域に密着した医療も やりがいがあると思っているよ。」
翔と奈緒は 時々、そんな話しもしていた。
いずれ二人で開業し、一緒に仕事をしたいと思っていた。