青春ヒロイズム



「俺、正直言って深谷にいい印象なかったんだよね」

今では考えられない小学生のときの自分を思い出して苦笑いしたとき、星野くんが笑いながらそう言った。

星野くんが何を思ってそう口にしたのかわからない。

笑い方や声音に悪意がないのは感じたけれど、以前にも聞いたその言葉がグサリと胸に刺さった。


「深谷って、俺らがちょっとでも悪さするとすぐに担任にチクってきたし。同じクラスのときは、やたらと俺の持ち物とか行動とか貶してくるし」


星野くんの言葉に、私は何も言い返せなくなる。

確かに、小学生のときは槙野くんや石塚くんに混じってたくさんやんちゃなことをしていた星野くんにも、いろいろと言った覚えがある。

ただ星野くんに限って言えば、悪戯を指摘するという名目でちょっとでも会話したいという邪な想いもあった。

だけどいつか星野くんに指摘されたみたいに、そんな小学生男子みたいな行動の意味が彼に伝わるはずもない。


ずいぶん長いこと私とふたりだけで話を続けてくれた星野くんだけど。


結局のところ、星野くんが私に言いたかったのは。

『深谷にはいい印象がない』

このひとことに尽きるのだろう。


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