青春ヒロイズム
そっか、よかった。
私、星野くんに少しは見直してもらえてたんだ。
嬉しさと恥ずかしさで、心臓の音がドキドキと速くなる。
このままこんなふうに、星野くんに少しずつ認めていってもらえたら。
そうしたらもしかして……
小さな期待に胸をときめかせていると、星野くんが不意に神妙な顔付きで私を見上げた。
一瞬前までとは違う星野くんの深刻そうな雰囲気に、嫌な予感で胸が騒ぐ。
私を真っ直ぐにじっと見上げる星野くんの瞳を見つめ返してほんの少し首を横に傾けた、そのとき。
星野くんが、静かに口を開いた。
「なのに、なんで、卒業式の前日に俺にあんな嫌がらせしたの?」
卒業式の前日──……?
星野くんの言っていることがよくわからない。
彼が言う、嫌がらせにも心当たりがない。
小学六年生のとき、私と星野くんは同じクラスだった。
小学校生活最後の一年間、私はずっと星野くんのことが気になっていた。
でも、彼に対して憎まれ口は叩けても気持ちを伝えることはできなかった。
中学受験をして地元から離れた私立中学に進学することになっていた私には、卒業式が星野くんと話せる最後のチャンスだった。