青春ヒロイズム


数年ぶりに着る浴衣で家を出た私は、履き慣れない下駄で不器用に歩きながら待ち合わせの駅まで向かった。

待ち合わせの時間には十分間に合うけれど、慣れない格好とひさしぶりの待ち合わせにそわそわする。

数分刻みに何度もスマホで時間を確認しながら待ち合わせの駅前に着くと、既に到着していた村田さんと岸本さんが私に気付いて手を振ってきた。


「友ちゃん」

名前を呼ばれて、私も小さく手を振り返す。


「ミタニンの浴衣、可愛い」

紺地に牡丹の私の浴衣を岸本さんが褒めてくれる。


「髪も。いつもと雰囲気違って見えるね」

村田さんも、そう言って私を見てにこにことする。

普段は肩までの髪を自然におろしているか、たまにひとつに結ぶ程度だけど、今日は浴衣を着るからとお母さんが綺麗にアップにしてくれた。

家を出るときは、いつもと違う自分の見栄えにそれなりに満足していたけど……

同じように浴衣を着てヘアアレンジもしている村田さんと岸本さんのほうが、いつもの倍増しで可愛い。



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