青春ヒロイズム
「深谷、いくぞ。電車来る」
自信なく足元を見ていたら、星野くんに声をかけられた。
はっとして顔を上げると、村田さんと岸本さんは既に槙野くんや石塚くんたちと並んで歩き始めている。
みんなについて行きかけていた星野くんも、少し離れたところからぼんやりしている私を呼んでいた。
「ご、ごめん」
慌てて走って追いつくと、星野くんが呆れたように笑いかけてきた。
「深谷、あの花火大会行ったことある?」
「ずーっと昔に家族で」
「そっか。なら知ってるかもだけど、あの花火大会、毎年すげぇ人なんだよ。今みたいにぼーっとしてたら、すぐ迷子になるからな」
「ごめん、気を付ける」
子どもみたいに注意されて、シュンとなる。
少し項垂れながら星野くんについて駅の改札を抜けると、花火大会に向かうらしき人たちがたくさんホームにいた。
「友ちゃん、カナくん。こっちだよ」
先にホームに入っていた村田さんたちが、私と星野くんを手招きする。
星野くんと一緒に村田さんたちに合流すると、私たちは次に来た電車に全員で乗り込んだ。