青春ヒロイズム
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花火大会の会場になっている河川敷は、電車を降りて駅から歩いて十分くらいだった。
花火大会のために交通整備されて一方通行になっている遊歩道を、沢山の人たちの波にのってみんなで進んでいく。
花火大会会場の入口を抜けてさらに進むと、河川敷の少し開けた場所にたくさんの屋台が並んでいた。
ソースの匂いとか、甘い匂いとか。歩くたびに美味しそうな匂いが漂ってきて食欲をそそられる。
食べ物の屋台意外にも、射的とかゲームの屋台もあるみたいでなんだか楽しそうだ。
屋台が見え出してから、みんなの意識はほとんどそっちに持っていかれてしまって、自然と会話が減っていく。
「ねぇねぇ、ちょっとまだ時間あるし遊ぼうよ」
ついに岸本さんが、立ち並ぶ屋台を見回しながら近くにいた石塚くんのTシャツを引っ張った。
「おぅ、俺も腹減った。愛莉、なんか奢れよ」
「は?普通逆でしょ」
岸本さんと石塚くんがふたりで言い合いながら、屋台に引き寄せられるように私たちから離れていく。
「愛莉ー、先に場所取らなくていいの?」
少しずつ距離が遠くなる岸本さんたちを村田さんが心配そうに呼び止めたけど、人が多くてザワザワしているからふたりとも気付かない。