青春ヒロイズム
クラス名簿で前後の席の人の名前を確認はできるだろうけど、彼女の訊ね方はまるで私のことを知ってるような口ぶりだ。
驚いて瞬きしていると、色白でくりっとした目が印象的なその子が、私を見て人懐っこく微笑む。
「私、村田 智香。地元の幼稚園と小学校が一緒だったんだけど、覚えてる?」
「村田、さん……?」
聞いたことのあるような、ないような名前に首を傾げる。
「覚えてないかな?昔はよく『トンカ』って呼ばれてたんだけど」
村田さんがそう言ったとき、ようやくその名前にピンときた。
「あぁ、トンカちゃん」
確かに、そういうあだ名で呼ばれていた女の子がいた。
でも、目の前にいる村田さんと記憶の中の『トンカちゃん』の印象はかなり違う。
『トンカちゃん』はもうちょっと……
「そう。やっぱり、深谷 友ちゃんだ!」
にっこりと笑う村田さんの大きな声が、私の思考を遮る。