青春ヒロイズム
「聞いて欲しいなら聞くけど?」
しばらくの沈黙ののちに、星野くんが口を開く。
星野くんのそのひとことに、胸が苦しくなって泣きそうになる。
うつむいてしまった私は、静かに首を横に振っていた。
「それよりも俺、ほかに深谷に聞きたいことがある」
「え?」
「お前とあいつ。今西って、小学校のとき仲良かったんだよな?」
「う、ん?」
ナルが話したことよりも、小学校のときの私と彼女の関係にのほうが聞きたいってこと?
よくわからなくて星野くんを振り向いて首を傾げると、彼がやけに神妙な顔付きで私のことを見ていた。
「あともうひとつ。小学校の卒業式前日に俺にしたこと、覚えてないんだよな?」
「う、ん……たぶん」
前に中庭で星野くんに聞かれた卒業式前日のことについては、未だに何も思い当たることがない。
だけど無意識に彼に何かしてしまった可能性は否定できないから、曖昧に頷く。
すると星野くんが、何か考え込むように頭を押さえてからため息を吐いた。
「今から俺が話すこと、もし間違ってたら訂正して」
星野くんはそう言うと、私に身に覚えのない小学校の卒業式前日にあったことを話してくれた。