青春ヒロイズム


小学校の卒業式前日。

登校すると、星野くんの机の中に一通の手紙が紛れ込んでいたそうだ。

桜色の封筒に書かれていた差し出し人の名前は、深谷 友。

クラスの学級委員をやっていて、何かと口煩く星野くんを含めた男子を注意してくるけど、仲は良くも悪くもない。

星野くんにとってそんな存在だった私が机に入れたと思われる封筒の中には、一枚の手紙が入っていた。


『話したいことがあるから、放課後体育館の裏に来てください』

それを見た星野くんが何を思ったのかまでは話してくれなかったけど、ともかく彼はその手紙に書かれていたとおりに放課後に指定の場所に来てくれた。

だけど、体育館裏には誰もいない。

そのまますぐ帰ったって良かったのに、星野くんはしばらく私が来るかもしれないと思って待っていてくれたそうだ。

でも、二十分、三十分と待っても私は姿を現さない。

さすがにもう帰ろうと思ったとき、突然木の陰からスマホカメラのシャッター音がした。

驚く星野くんの前に姿を現したのは、私ではなくてナル。

ナルは、今撮ったばかりの気の抜けた星野くんの写真を見せながら笑った。


『星野くん、可哀想。友に騙されちゃったね。友、いつも悪さしてばっかりの男子たちの中でも、特にあんたのことが大っ嫌いなんだって。だから、卒業して離れる前にあんたのことを嵌めてやりたかったらしいよ。この写真も友に撮ってくるように頼まれたんだ』


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