青春ヒロイズム
「私は星野くんの机に手紙は入れなかったし、ナルに星野くんを嵌めて欲しいなんて頼んでないよ」
「なんか、それ聞いたらちょっとほっとした」
星野くんが小さくつぶやく。
「俺もごめん。深谷に最初からちゃんと確かめるべきだった」
「星野くんは何も悪くないよ」
私は力なく微笑むと、首を横に振った。
「卒業式前日のあれは、今西がひとりでやったか、誰かが今西に頼んで深谷のせいにしたってことだよな?さっきも聞いたけど、深谷と今西って仲良かっただろ。それがなんで……」
「確かに仲良かったよ。小六の二学期くらいまでは。でも、最後のほうは折り合いが悪かったんだよ、私とナル」
星野くんがさっき花火大会で会ったときのナルの態度のことも含めて訊いているのだとわかって、苦笑いする。
「私とナル、中学受験したでしょ?たまたま、同じ塾に通ってたんだ。それで、割と仲良かったの」
ナルは小学校での成績はもちろん優秀だった。
自分で言うのもなんだが、私も小学校での成績は優秀なほうだったと思う。
でも受験向けの塾の成績に関しては、いつもナルが私なんかよりもずっと上位だった。
ナルは私の志望校よりも偏差値の高い学校を目指して頑張っていたのだけど、六年生の二学期のあるときからあまり成績がふるわなくなった。