青春ヒロイズム
「深谷……?」
ドキッとしながらふたりを見上げて小さく会釈すると、私の顔をじーっと見てきた石塚くんが「あー」と大きな声をあげた。
「いたいた、深谷。思い出した」
「ね、懐かしいよね」
遠慮なく私に向かって指差してくる石塚くんを、村田さんがにこにこと見上げる。
それから、村田さんが星野くんのほうに視線を向けた。
「カナくんも覚えてるでしょ?」
村田さんに訊ねられて、星野くんが私に視線を向けた。
そのことに一瞬胸がときめいたけれど、すぐに彼が私を冷めた目で見ていることに気が付いてしまう。
嫌な予感に、胸が騒ついた。
「カナくん?」
村田さんが何も言わない星野くんを見上げて、不思議そうに首を傾げる。
「ごめん、智ちゃん。俺はわかんねーや。誰だっけ?」
無表情で私に向かってそう言った星野くんが、村田さんを振り向いてふわっと笑いかけた。