青春ヒロイズム
9.事実と事情
不穏な空気が漂い始めたのは、高校一年の夏休み明け頃だった。
同じバレー部に所属していて、中等部のときから仲が良かった森ちゃんが、あまり笑わなくなった。
周りに気配りできる優しい子で、笑うと目尻が垂れるのが可愛い。
そんな彼女があまり笑わなくなったことを心配していたら、そのうち部活を休むようになった。
最初は週一で休んでいたのが、週二、週三と休むようになり。ついには、週一回部活に顔を出すか出さないかというくらい休むようになってしまった。
心配になって訳を聞いたら、「体調不良で放課後部活に行く元気が湧かないの」と苦く笑う。
そのときの森ちゃんは、確かに少し顔色が悪かった。それに、以前より痩せたような気もした。
体調不良だと言う割には学校には毎日来ているし、どうやら体育の授業には参加している。だけど、部活には来ない。
部活の先輩や同級生たちはそんな森ちゃんを心配する一方で、彼女がただサボっているだけなんじゃないかと影で悪く言ったり非難したりもしていた。