青春ヒロイズム
なんとなくしばらく見ていると、ナルが私に気が付いた。
あ、ヤバい。意味もなく、ナルのこと観察しちゃった。
気まずさを感じながら、いつもどおり知らないフリをして去ろうとしたとき、なんの気紛れか、ナルが私を呼び止めた。
「友、ひさしぶり。どうしたのー?」
ナルがそう言うと、彼女の周りにいた友人たちがおしゃべりをやめて一斉に私のほうを見る。
ナルの声に、私がさっき森ちゃんのことを訊いた子がやや怯えたように肩を揺らした。
あとで考えてみたら奇妙だったのに、ナルの言葉で一斉に私のことを見た彼女の友人たちの雰囲気のほうが異様で、その子のことはあまり印象に残らなかった。
小学校を卒業後して以来、もう三年近くも言葉を交わしていないナルに、突然親しげに声をかけられて戸惑う。
どうした、って。何を答えればいいの……?
無視して去ることもできなくなって困っていると、ナルが友達グループから抜けて、私のほうに歩み寄ってきた。