青春ヒロイズム
「あ、休み時間終わっちゃった……」
森ちゃんに会いに行こうと思っていたのに、時間がなくなってしまった。
「引き止めてごめんね。何か用事があった?」
私のつぶやく声に反応したナルが、首を傾げる。
「あ、うん。ちょっと保健室に行こうと思ってて……」
「もしかして、森さん?友、仲良いよね」
眉根を寄せて、声を低くしたナルは、森ちゃんのことを心配しているようだった。
だからつい、ひさしぶりに会話をしたナルに訊いてしまった。
「うん、そう。森ちゃん、この頃元気ないみたいなんだ。部活も来なくなっちゃったし。ナル、何か知ってる?」
このとき、どうしてナルにそんなことを訊いてしまったのだろうと今も思う。
聞かずにいたら、森ちゃんをさらに傷つけることもなかった。
だけど私はとても純粋に、森ちゃんのことが心配だった。
「んー。最近、全然教室来ないね。でも、私も理由はわからないかな」
「そっか」