青春ヒロイズム
「体調が良くなったら、また前みたいにバレーしたくなるかもよ。部活のみんなも、森ちゃんのクラスの子もみんな待ってるし。森ちゃんと同じクラスのナルも、『困ったことがあったら相談のるよ』って伝えて欲しいって言ってたし」
森ちゃんのことを元気付けたくてそう言ったのに、私の話を聞いた彼女の顔がみるみるうちに青ざめた。
「ナルって、今西さん、だよね?友ちゃん、今西さんと知り合いだっけ?」
「うん、小学校の同級生。卒業前にちょっと拗れてずっと話もしてなかったんだけど、急にさっき話しかけられて」
「そ、なんだ……」
「うん。森ちゃんと仲良いよね、って言われた。森ちゃんがあんまり教室に来ないこと、気にしてる感じだったよ」
「そ、っか。ごめん、友ちゃん。なんかちょっと調子悪くなってきちゃった。私、寝ていい?」
声を震わせてそう言った森ちゃんは、唇まで青ざめていて、本当に調子が悪そうだった。
「うん、ゆっくり休んでね」
だから私はそう言って、保健室を後にした。
森ちゃんが青ざめていた、本当の理由も知らないで。
『森ちゃんが、同じクラスの今西 成美に嫌がらせされてるらしい』
そんな噂が私の耳に届いたのは、それから一週間後のことだった。