青春ヒロイズム
「なぁ、深谷。今すぐ今西に電話して、文句言っていい?」
私に向かってとんでもないことを訊いてくる星野くんの目が据わっている。
「え、だ、ダメだよ。そんなの。これは私とナルの問題だから」
「だよな。深谷の話聞いて、今は絶対そのタイミングじゃないし。一回仕切り直すわ」
星野くんが苛立ちを抑えるように息を吐いて、それから何かを納得させるみたいに頷いた。
星野くんの言葉に首を傾げたとき、ホームルームの終わりを知らせるベルが鳴る。
「あ、ごめん。結局、全部サボらせちゃった」
「いいよ。どうせ途中から行ったって、こっちが気になってただろうし」
星野くんが独り言みたいにぼそりとこぼしながら、立ち上がった。
「腹減った。歩いて帰れそうだったら、なんか食いに行かない?」
私を振り向いた星野くんが優しい顔で笑うから、ドキッとする。
「え、っと…ふたりで?」
突然の誘いに戸惑い気味に言葉を返すと、星野くんの笑顔が微妙そうな表情に変わった。