青春ヒロイズム
「もしふたりがビミョーだったら、智ちゃんたちにも声かけるよ」
星野くんがスマホを出すのを見て、自分が深く考えずに口にしてしまった言葉を後悔した。
あんな話をしたあとでも変わらない態度で接してくれる星野くんとふたりでいて、ビミョーだなんて思うわけない。
むしろ、ふたりのほうが……
ベッドから身を乗り出した私は、衝動的にスマホを持つ星野くんの手をつかんでいた。
「ビミョーじゃないよ。星野くんとふたりで行くの」
ちょうどメッセージアプリを開こうとしていた星野くんが、顔を上げて目を瞠る。
彼の双眼には、泣きそうなくらい必死な自分の姿が映っていて。それが、ひどく滑稽だった。
「星野くん。もうひとつだけ聞いてもらいたいことがあるんだけど、いい?」
星野くんの瞳に映る自分を見つめながら、苦く笑う。
彼からの返答はなかったけれど、それが肯定の意思表示だと都合のいい解釈をすることにして。私はもうひとつだけ、ずっと心にしまっていた昔話を始めることにした。