青春ヒロイズム


「星野くんが卒業式前日のことを話してくれたときに、机の中に私からの手紙が入ってたって言ってたでしょ?あれね、机に入れたのはたぶん星野くんをハメようとしたナルだけど、手紙自体は私が書いたものだと思う」


それを聞いた星野くんが、何か言いたげに眉を寄せて僅かに唇を震わせた。

卒業式前日の一件には、結局私も絡んでいたのではないか。星野くんにそんなふうに疑われているような気がして、慌てて次の言葉を繋ぐ。


「その手紙ね、私が六年生のバレンタインデーに当時好きだった人に渡そうと思って書いたやつなの」

「え?」

思わず、といった感じで驚きの声を漏らした星野くんの顔が唖然となった。

当時好きだった人。そう言ってしまった時点で、きっともう、星野くんには私の気持ちがバレている。

当時の私は、桜色の便箋と封筒にとてもドキドキしながらその好きだった人の名前を書いたから。


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