青春ヒロイズム


小学校最後のバレンタインデー。私は中学校が別々になってしまう好きな人に頑張って告白しようと思って、手紙とチョコを用意した。

緊張するし、恥ずかしいけど、あまり人の来ない体育館裏に来てもらって、ちゃんと自分の言葉で伝えてチョコを渡そうと思ってた。

だけど、放課後。たしかにランドセルに入れたはずのチョコと手紙がなくなっていた。


「学校中探し回ったら、破られた包装紙が教室からずっと遠いゴミ箱に捨てられてて、中身はぐちゃぐちゃになって焼却炉に捨てられてて。手紙は結局見つからなかったの」

確証はないけど、星野くんから卒業式前日の話を聞かされたとき、ナルが持って行って隠してたのだと思った。

バレンタインデーに告白を考えてることは、ナルとの共通の友達には言っていたから、そこから話が漏れたのかもしれない。

唇を歪めて苦く笑うと、まだ茫然としたままの星野くんをジッと見て、浅く息を吸い込む。

ドキドキと急に速くなる鼓動を抑えながら、私は吸い込んだ空気を一気に吐いた。

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