青春ヒロイズム


軍手をつけて網を火から下ろして残り火の処理に迷っていると他のクラスの先生が見回りに来た。

火をどうしたらいいか聞いてみたら、あとでキャンプ場の人が火消し用のバケツを持って見回ってくれるというので、とりあえずそのままにしておくことにした。

食材を焦がしたときに真っ黒にしてしまった網も洗ったほうがよさそうなので、それを持って炊事場に戻る。

炊事場の水道には、洗剤やスポンジ、タワシが用意してあったから、汚れが少なそうなものから洗っていくことにした。

水道の蛇口を捻って、何も考えずに流れ出てくる水に触れたら、思ったよりも冷たくて指先がキーンとした。


「冷たいー」

グーパーしながら水の冷たさに慣れようとしたけど、なかなかキンキン、ジンジンする痛みは治らなくて、思わず独り言が漏れてしまう。

山の水ってこんな冷たいのか。

もう春なのに、真冬みたいに冷たいキャンプ場の水と闘いながらなんとか洗い物を続けた。


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