青春ヒロイズム
「星野くんて、村田さんのこと好きだよね」
自嘲気味に笑いながら小さくつぶやくと、星野くんが驚いた顔で私を見てきた。
「違うよ。前も言ったよな。智ちゃんはただの幼なじみで、友達の彼女だって」
焦ったり動揺したりすることもなく、星野くんが冷静に否定する。
だけどこれまでずっと星野くんのことを見てきた私には、その言葉が事実だとは思えなかった。
「気持ちを伝えるかどうかは別として、幼なじみや友達の彼女を好きになっちゃうことはありうるでしょ?」
「そりゃ、あり得るかもだけど。俺が智ちゃんを恋愛対象として好きとかはないな」
星野くんはけらりと笑って否定したけど、彼が否定すればするほど、私は切なく悲しい気持ちになった。
「自覚ないだけで、好きなんじゃないかな」
「いや、ないって。お前、根に持つうえにしつこいな」
ポツリとつぶやくと、星野くんが顔の前で手を振って否定しながら冗談交じりに笑う。