青春ヒロイズム


テストの一週間前は、生徒たちを勉強に集中させるために部活が休みになるらしい。

私はどちらかというとひとりで勉強したほうが集中できるタイプなのだけど、他のみんなはこうやって何人かで勉強したほうが捗るそうだ。


「ねぇ、ミタニン。ここはどうすればいいの?」

問題を解くのに行き詰まったらしい岸本さんが、私のほうに教科書とノートを寄せてくる。

押し付けられた教科書の問題をよく見ようとしたとき、石塚くんが急にけらけらと笑い出した。


「さっきから思ってたんだけどさー。なんだよ、岸本のミタニンて呼び方。ゆるキャラみてーなんだけど」

最近岸本さんが私を呼ぶときのあだ名については、私もちょっと気になっていた。

そのあだ名で呼んで欲しいとお願いしたことはないけれど、呼ばれて嫌なわけでもない。

だから敢えて突っ込まずにきたのだけど、石塚くん的にはツボだったらしい。

勉強の手を止めて、けらけら笑っていた。

石塚くんがあまりに笑うので、岸本さんがムッとしたように唇を尖らせる。

「何がそんなおかしいのよ。だって、下の名前で呼ぶと智香とちょっと被るじゃん」

「そう?愛莉も友ちゃんて呼べばいいじゃん」

「だからそれだと、カナキの智香の呼び方と被るんだよ」

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