青春ヒロイズム
「何でもいいよ、私は……」
私のあだ名議論が始まって、村田さんと岸本さんの手が止まる。
わからなかった問題はもういいのかな。
岸本さんから押し付けられた教科書を気にしつつ苦笑いを浮かべていると、突然槙野くんがバタンと机に突っ伏した。
「あーっ」
槙野くんの呻き声に、何事かと目を瞠る。
しばらく動向を見守っていると、槙野くんが気怠そうに顔を上げた。
「久々に勉強頑張りすぎて頭痛してきた」
「何言ってんだよ。憲、まだ一問も解いてねーじゃん」
横から覗いた星野くんが、呆れ顔で突っ込む。
ふたりのやり取りを見ていた私は、苦笑して立ち上がった。
「そういえば私、職員室に日誌出しに行かなきゃいけないんだった」
「え、そうなの?」
村田さんと岸本さんが、同時に私を見上げる。
ふたりもそうだけど、すっかりダレてしまっている槙野くんたちも勉強会を始めて早々に集中力を切らしてしまっている。