0センチの境界線
─────部活帰り。駅までの道。
隣を歩く同じサッカー部の佐々木は、たぶん面白がってる。
「いくらモテ男でも、山之上さんには敵わねえってか?」
「口縫い付けんぞ」
「ひいいい、こっわ」
怖いなんて思ってないくせに。
俺をからかう佐々木は、心底楽しそうに笑った。
「なあ、聞きたいことあんだけど、」
「わりい、さすがの俺でも山之上さんの気持ちはわかんねえよ?自分で聞けよ」
「ちっげえよ!バカ!」
「あー、ごめんごめん。怒んなって」
こんの野郎。
絶対いつかやり返す。
佐々木のことをたっぷりの恨みを込めて睨むけど、空気よりも軽い男──佐々木はスルリって視線から逃げてく。