0センチの境界線


─────部活帰り。駅までの道。

隣を歩く同じサッカー部の佐々木は、たぶん面白がってる。



「いくらモテ男でも、山之上さんには敵わねえってか?」

「口縫い付けんぞ」

「ひいいい、こっわ」



怖いなんて思ってないくせに。

俺をからかう佐々木は、心底楽しそうに笑った。



「なあ、聞きたいことあんだけど、」

「わりい、さすがの俺でも山之上さんの気持ちはわかんねえよ?自分で聞けよ」

「ちっげえよ!バカ!」

「あー、ごめんごめん。怒んなって」



こんの野郎。

絶対いつかやり返す。

佐々木のことをたっぷりの恨みを込めて睨むけど、空気よりも軽い男──佐々木はスルリって視線から逃げてく。


< 113 / 288 >

この作品をシェア

pagetop