0センチの境界線


「んーまあさ。山之上さんの気持ちはわかんねえって最初に言っただろ。知りたいなら自分で聞け」



肝心なことははぐらかす。

核心には触れてくれない。

佐々木はそういう男で、それを俺もわかってて聞いたくせに。



「………うっざ」



答えがすぐそこにありそうで届かない。
期待、の二文字がふわふわ宙に浮いてる。


他人に聞くのは反則だ。

そんなの佐々木に言われなくてもわかってる。


けど、他人に聞きたくなるほど、確かじゃない慰めでも心が楽になるほど。

雛のことが好きで好きでしょうがねえって。

いつになったら、雛に伝えられるんだろうな。


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