0センチの境界線
「俺は何もした覚えない。変わったことしたって言えば、お前の入れ知恵のやつなんだよ、」
────山之上さんみたいな女のコの落とし方、俺が教えてやるよ。
佐々木がからかうようにそういったのは、俺が雛の誕生日のことを相談した時。
普段の俺なら佐々木のそんな言葉に惑わされるわけねえのに。
あの日は兎に角、誰かにアドバイスをもらいたかった。
────ああいうウブな子は、ガツガツいってもダメなわけ。男だしたらダメなの。
確かに。俺がどんだけアピっても。あいつはなんにも気づいてない。
というか、意識すらしてくれてない。
押し倒しても、耳噛んでも。平気な顔して。
なんなら、いちばん雛が焦ってたの、お姫様抱っこじゃん。なんだよそれ。