0センチの境界線
気の抜けた声。振り向けば、自転車に乗った橋田さんが居た。
なぜか橋田さんは俺の横でご丁寧に止まって、それから少し面白そうに笑った。
そういえば、雛が俺らの学校の隣って言ってたな。
フワフワしてる橋田さんが電車通学じゃなくて自転車通学ってのちょっと意外だ。
「………明日からは、」
「あっ、もしかして、雛ちゃんに置いてかれちゃった?」
ピクっと、たぶん俺の怒りスイッチが動く。
それは、橋田さんに対してとかじゃなくて、この状況を文章で表されたことへの、怒り。
「雛ちゃん歩くのはやいもんね〜。あんなに小さいのに」
頼んでもないのになぜか自転車から降りて俺の隣を歩き出した橋田さんは、さらに俺を煽ってくる。
「というかね、雛ちゃん普段はもうちょっとおうちでるの遅いんだよ〜?今日はなんか予定でもあったのかな〜?」