0センチの境界線


わたしは、ヒロインのようにはなれない。

わかってるのに、わかりたくない。

漫画のヒロインみたいに、素直にヒーローに期待なんてできない。

もしかしたら、なんて思わないようにしているし、期待なんてものは持つだけバカバカしいと思ってる。





─────俺、カノジョできた。


もうあんな思いはしたくない。
期待なんかしたくない。

飛鳥が、助けに来てくれるかもなんて。

倉庫の扉を開けてくれるのは飛鳥だなんて。

ほんの少しでも思うんじゃなかった。




「……………八つ当たりすぎるよ、こんなの」



飛鳥はなんにも悪くない。
なのに、この胸のモヤモヤの矛先がわからなくて迷子になる。


パラパラとページをめくる。

たまたま開いたコマに、ヒロインの一言。『助けに来てくれると思ってた』


ああ、ほんと。そんなの有り得るわけないのに。



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