0センチの境界線
喉の奥から、柔らかくて、どこか恥ずかしい声が出る。
息が出来ない。息苦しい。
なのに、やめないでって、思う。
頭がだんだんぼんやりしてくる。
甘くて、恥ずかしくて、逃げだしたくなるけど、逃げたくない。
「……あ、すか」
自分が自分でなくなっちゃう気がして。
優しく落とされるキスの間に、名前を呼べば。
「雛、」
って、甘い声がわたしを思い出させてくれた。
────────夏休みが始まる3日前。7月17日。
わたしは、ずっとずっと越えられなかった友達の境界線を超えた。