0センチの境界線


喉の奥から、柔らかくて、どこか恥ずかしい声が出る。

息が出来ない。息苦しい。

なのに、やめないでって、思う。


頭がだんだんぼんやりしてくる。

甘くて、恥ずかしくて、逃げだしたくなるけど、逃げたくない。



「……あ、すか」



自分が自分でなくなっちゃう気がして。

優しく落とされるキスの間に、名前を呼べば。



「雛、」



って、甘い声がわたしを思い出させてくれた。





────────夏休みが始まる3日前。7月17日。

わたしは、ずっとずっと越えられなかった友達の境界線を超えた。


< 268 / 288 >

この作品をシェア

pagetop