0センチの境界線


「なんかわかんないけど、朝日のせいで飛鳥がキラキラって見えて、一緒に行けばいいだろって腹立つセリフまでなんかキラキラしてる」

「…………褒めてんの?」

「褒めてない!……多分」



ムカつくけれど、飛鳥ってすっごくカッコいいんだよ。

タイプかタイプじゃないかでいったら、わたし2号室の前田くんのがタイプなんだけど、この際それはどうでもいい。


かっこいい顔の飛鳥が、なんかかっこよく立って、かっこよく視線逸らして、かっこよく一緒に学校行こってわたしに言うの。


友達特権ってわかってるけど、一応女のコのわたしだから、ちょっとはキュンってしちゃうよ?



「で、行くの?行かねえの?」

「え?どこに?」

「……………ほんとに雛ってバカ」

「ば、バカって朝から言わな…………っ…!?」



ぼす、って。飛鳥の体にわたしの頭が当たった。

突然飛鳥がわたしのスクバを引っ張るから、勢い余ってぶつかってしまったのだ。

ちょっと鼻が痛い。大負傷。




「飛鳥、痛い、鼻」

「……あっそ」



飛鳥は痛がるわたしなんて気にしずに、ズンズンズンって歩いてく。

あいかわらずスクバは持ったまま。犬の散歩みたい。


飛鳥ってやっぱり記憶喪失なのかな。

こんな風に引っ張って登校したら、バレるのわかんないのかな。




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