0センチの境界線
背中には扉。目の前には飛鳥。
飛鳥のこと好きな子からしたら、多分鼻血もののシチュエーション。
人混みから守るみたいにわたしに壁ドンする飛鳥は、ちょっとだけかっこいい。かもしれない。
でもこれは、あくまでこのシチュエーションがかっこいいってだけで、飛鳥がかっこいいってわけじゃないの。多分。
飛鳥の匂いが、する。
わたしと同じいい匂い。
綺麗好きのヤマさんが、家に着いたら制服にいい匂いのやつシュッシュッシュッてしてくれるの。
だから、ふたりとも同じ匂い。
当たり前なのに、なんか恥ずかしい。
「飛鳥痛くないの?」
「なにが?」
「手」
「なんで?」
「いや、ずっと壁についてるから」
「別に大丈夫」
こんなに距離が近いのに。飛鳥はなんにも感じてないんだろうな。
それがちょっと悔しくて、ちょっと寂しい。
なんかわたし、変なの。