0センチの境界線


掴まれてた手首が、昨日からずっとずっと熱い。


飛鳥の拘束は、緩かった。

だから、逃げようと思えば、抵抗しようと思えば、できた。

それなのに、わたしはしなかった。

もう辞めよう、飛鳥とわたしは友達だからって、隠したはずの気持ちが邪魔して、友達らしく振る舞えなかった。





『押し倒して手首掴むとかキモチワルイ!飛鳥ヘンタイ!』
そういって、押し返すのが正解だった?


『冗談やめてよ、飛鳥って頭悪い!』
そういって、飛鳥のことまっすぐ見るのが正解だった?



─────教えてよ、飛鳥。飛鳥はわたしにどうしてほしくて、あんな事したの?



■□■



「ねえ、雛。今日の雛は、ほんとにヤバいよね?」

「…………琴音?」

「琴音?じゃないよ!顔色悪すぎ、顔面蒼白。どしたの?」



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