0センチの境界線







寮に住み始めてから2回目。

雛と一緒に電車に乗るのは。


今日の雛は自分の足が上手く動かないこともあって、大人しく俺と帰ってる。

素直でちょっと可愛いって思った。ほんとにちょっと。



「あんなに嫌だって言ってたくせに、月曜日と今日。俺と帰ってんじゃん」



謝ってやったんだから。ちょっとは意地悪させろ。

からかうように口角を上げれば、隣に座る雛はおっきな目を更におっきく見開いた。



「なっ、それは、月曜は飛鳥が帰りたそうだったからじゃん、」

「ふーん。今日は?」

「………今日はわたしが寝たからです」

「そうだなあ。バカ雛が校舎にもうヒトカゲもほぼ居ない状態になるまで寝てたせいだよなあ」

「眠たかった、んだもん……」



あー、拗ねてる拗ねてる。いい眺め。



「だいたい、眠たいのだって元はと言えば、飛鳥のせいで、それで、」

「なに?聞こえねえ」

「なんでもありません!」


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