0センチの境界線
ブツブツ文句言い続けてる雛は、チラチラ俺のことを見て、目が合う度に噛みつきそうな顔をして。
ぜんっぜん、怖くねえから。
なんだよその顔、鏡で見てみろよ。
「なあ、雛、」
「なに!」
「お前ってあんなんがタイプなの?」
「あんなん?」
はて、とでも言いたいように雛は小首を傾げる。
いちいち全部小動物みたいに動くの、ほんとやめて欲しい。
「前田、」
「え?前田くん?な、なんで?」
どもった。絶対タイプってことじゃん。
昨日だって俺に紹介するとき、かっこいいって言いかけてたし、前田に対してなんか優しいし。
「なんでもだよ、」
知りたいだけ。気になるだけ。
別に雛のタイプなんて知ったってどうにも出来ねえし、どうにもならねえってわかってるけど、知りたいんだよ。
こんなこと、死んでも言わねえけど。