本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
料飲事務所の前で高見沢さんに注意を受けていると優月ちゃんが、「はい、チョコあげるね。コレ食べたら、きっと元気が出るよ」と言ってベルギー産の個包装されたチョコレートを私の手の平に二粒乗せてくれた。

このチョコレートは一颯さんが私と優月ちゃんにくれたもの。お礼を言って受け取り、その場で口の中に入れる。子供地味ているかもしれないけれど、一颯さんが傍に居てくれているような感覚に陥る。

一颯さんとの関係を知っているのは、社内外のどちらでも優月ちゃん一人だけ。一颯さんも優月ちゃんを信頼しているから話しても問題ないと言ってくれた。

「優月ちゃん、有難う。元気出たよ。頑張って来るね」

「そっか、良かった!今日はお忍びのお客様が来るんだよね。誰なんだろう?……ごめんね、私は誰が来るのかちょっと楽しみ」

たわいもない会話をしていると、「早くペットボトルをカゴに入れて持って来なよ」と言われて高見沢さんに指摘された。

プラスチックのカゴに入れられたミネラルウォーター達を持ち、業務用のエレベーターへと向かう。私のお客様とは言え、荷物が重い……。

「ベルギー産の高級チョコ…、コレ、一颯君がくれたんでしょ?」

「はい、私が以前貰ったのと同じだから、そうだと思います」

「そう……。まだ関係が続いているのか…」

「え?関係って…?」

「んー…、何でもない!早く行って、冷蔵庫に冷やすよ!」

高見沢さんは意味深な事を言い放ち、聞き返したら誤魔化した。一颯さんにとって、あのチョコレートには秘密があるのだろうか?関係って何?女の人?

以前、一颯さんが食べさせてくれたのは箱入りのチョコレート。今回貰ったのは一粒ずつ、個包装されているチョコレート。同じ方からなのだろうか?

聞きたいけれど高見沢さんには怪しまれるし、どのみち教えてはくれないだろうし…一颯さんにも聞けないな。関係が女の人だとしたら、傷付くのは自分かもしれないから……怖くて聞けない。一颯さんを信じているからこそ、聞かなかった事にした方が良い事だってある。

ペットボトルを冷蔵庫に冷やしながら、心の奥底にしまう事にした。
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