本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「お客様第一主義も良いけどね、少しは危機感持ちなよ。何かあってからでは遅いからね」

高見沢さんは睨み付けながら私に言い放ち、冷蔵庫から缶ビールを勝手に取り出し、プシュッと勢い良く開けて飲み出した。

「俺は当直でもないし、退勤押したから仕事中でもないし、ビール飲むからね!」

「……はい、分かりました」

高見沢さんは自由気ままに過ごして、一颯さんがシャワーから上がるとシャワーを浴びに行った。

「お疲れ様。遅くまで大変だったな」

髪の毛をタオルで拭きながらシャワー室から出てきた一颯さんは、私の事を見下ろすように言った。

久しぶりに見る濡れた髪のままの一颯さんが艶やかで即効、ときめいてしまう。

「何だ?」

隣に座った一颯さんの顔をまじまじと見てしまい、一颯さんは不思議がった。顔が火照りを帯びて行くのが分かる。

「……ちょっとだけ抱きついても良いですか?」

私は言葉を言い切らぬ内に一颯さんに抱き着いた。返事は貰えないまま、一颯さんの腕は私を抱き締め返す。何も言わずに私の首筋に一颯さんの唇がチュッと言うリップ音と共に触れた。一颯さんを見上げると目と目で見つめ合った。シャワー室には高見沢さんが居るのに…一颯さんの温もりを離したくなくて、手を伸ばしてキスのおねだりをする。一颯さんの唇に触れるだけのキスをして、一颯さんの胸に顔を埋める。

「そんなに可愛い事されるとこの場で押し倒したいけど…それは無理だから、キスだけで我慢してやる」

一颯さんは私の顔を上げて、指先で頬に触れた。自分からおねだりしてしまったせいで、どんどん深く濃厚になっていくキス。それは職場内という背徳感はあっても止められなかった。
< 104 / 240 >

この作品をシェア

pagetop