本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「……今度、いつ…会えますか?」

「最近はなかなか休みが合わないから、恵里奈が休みの前日になったら部屋においで」

「……はい」

深みにハマっていく自分が怖い。会えない間は我慢出来るのに、二人きりになった瞬間に一颯さんに触れたいと思うのは何故だろう?

シャワーの音が聞こえなくなって、どちらからともなく身体を離す。高見沢さんがシャワー室から出てくる前に一颯さんは立ち上がって、髪の毛を乾かす為に洗面台に向かった。

「俺達は宿直室に泊まらせて貰うから、篠宮はいつも通りにここを使って。じゃあ、おやすみ」

一颯さんは別れ際に冷蔵庫からお茶のペットボトルとサンドイッチを取り出して、私に手渡し部屋を後にした。高見沢さんが居たのに、私の頭を撫でてから行った。そんな一颯さんを見ていた高見沢さんは私の事を睨んでから、

「穂坂 一弥から連絡が来たら、直ぐに連絡してよ。分かった?」

と言ってデコピンをした。

「…いたっ!…わ、分かりました。何も起こらないと良いですね…」

「さぁねー?おやすみ~」

高見沢さんは軽い感じで私に別れを告げると一颯さんの後を追うように急いで着いて行った。

一颯さんの温もりが次第に消えていく。
少しだけ会えただけでも幸せなのに足りないと思ってしまう。勤務中扱いなのに…寂しい。こんなんじゃ駄目だ。

頂いたサンドイッチを食べながら、一颯さんの事を思い出す。私は一颯さんの彼女としての自覚が足りないな。一颯さんに釣り合う為には寂しいとか言っていられないんだ。

一颯さんが用意してくれた最高のステージとして、バトラーとしての頂点を目指さなくては。例えば、それがサービスマンとしての私の行き着く先だとしても───……
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