本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
───午前2時05分。

サンドイッチを食べた後に連絡を待ちつつ、何となくテレビを眺めていたのだけれども…いつの間にか寝てしまい、ホテル専用のスマホの着信音に驚き、飛び起きた。

「お疲れ様です。スイートルームのお客様が篠原さんをお呼びです。至急、行けますか?」

「……お疲れ様です。今すぐ、向かいます」

宿直からの連絡だった。ホテル専用の私宛のスマホの番号を渡したのに掛けてこなかったのは何故だろう?多少、身なりを整えてから部屋に向かった。

「失礼致します。穂坂様、如何なさいましか?」

ノックをしてから問いかけると、虚ろな目をした穂坂様がドアを開けて出て来た。

「お酒、まだある……?ウィスキーでもジンのボトルでも何でも…いーんだけど?」

「……御座いますが、穂坂様、かなり酔われていらっしゃいますよね?これ以上は止めといた方が良いのではないですか?」

「お前…、俺に…さか、らう…気かぁー!」

私は胸元のスカーフを掴まれ、息苦しく声が出せない。

「まぁ、いい…。お前…が、あ…すみの…代わりになれば…いい」

スカーフを離した後、私の腕を掴み、乱暴にベッドまで連れて行き押し倒される。スカーフを抜かれ、乱暴にジャケットとブラウスのボタンを引きちぎられる。

もう喉元を抑えられてないので声を出せるはずなのに…恐怖感でいっぱいで少しも出す事が出来ない。あれだけ連絡が来たら電話しろと念を押されたのに、遅い時間だし寝てるかな?とか穂坂様は良い人そうだから大丈夫だよね?とか考えてしまって連絡を怠ったのは後の祭りだった。成人男性の握力には勝てはしない。
振り払おうとしても、両腕を掴まれていて逃げる事が出来ない。

どうしようか……?

どうしたら良いのだろうか…?

その時、穂坂様の目から涙が私の顔に落ちて来た。穂坂様はボロボロと泣き出して、来るはずだった女性の名だろうか?…「あすみ…あすみ…」と何回も唱え続けた。

「…穂坂様?」
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