本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
額に、頬に落ちてくる穂坂様の涙は、悲しみが大き過ぎて私にはどうする事も出来ない。握られて抑えつけられている両腕が痛い。
「…穂坂様、あすみ様の代わりにはなれませんけど…お話なら聞いてあげられますよ。苦しい時は吐き出して下さい」
人気俳優の穂坂 一弥が現在、流している涙は演技ではなく、本物だ。酒の力を借りなければならない程、悲しくて辛かったはずだ。穂坂様は私を抱く気なんて更々なかった。ただ、彼女が来てくれなかった事に対しての憤りとやるせなさを誰かにぶつけたかっただけなのだと私は考える。
「…ごめん、ごめんね…恵里奈ちゃん。恵里奈ちゃんまで傷付けるつもりなんてなかったんだ」
私の両腕から両手を離し、ゆっくりと私を起こし、誰も袖を通していないガウンをかけてくれた。
穂坂様は冷蔵庫の中から水のペットボトルを二本取り出し、一本を私に差し出した。有難たく受け取り、口に含むと乾き切った喉に潤いが戻った。
「……この先、どうしたら良いのかな?」
ソファーに項垂れる様に座った穂坂様がか細く呟く。消えてしまいそうな声を聞き逃さなかった私は「…どんな時だって立ち直れない時なんてないと私は思います」と切り出して話を始めた。
「実は私…、このホテルに来てからはどの部署でも使いものにならないって邪魔物扱いされていたんです。辞めたいと何度も思っていました。けれども…バトラーという仕事に出会ってからは自分からアレコレ考えて行動出来る様になりました。それからは毎日が楽しいんです。…今までは想像出来なかった世界が広がって、暗かった道筋に光が見えました」
「…穂坂様、あすみ様の代わりにはなれませんけど…お話なら聞いてあげられますよ。苦しい時は吐き出して下さい」
人気俳優の穂坂 一弥が現在、流している涙は演技ではなく、本物だ。酒の力を借りなければならない程、悲しくて辛かったはずだ。穂坂様は私を抱く気なんて更々なかった。ただ、彼女が来てくれなかった事に対しての憤りとやるせなさを誰かにぶつけたかっただけなのだと私は考える。
「…ごめん、ごめんね…恵里奈ちゃん。恵里奈ちゃんまで傷付けるつもりなんてなかったんだ」
私の両腕から両手を離し、ゆっくりと私を起こし、誰も袖を通していないガウンをかけてくれた。
穂坂様は冷蔵庫の中から水のペットボトルを二本取り出し、一本を私に差し出した。有難たく受け取り、口に含むと乾き切った喉に潤いが戻った。
「……この先、どうしたら良いのかな?」
ソファーに項垂れる様に座った穂坂様がか細く呟く。消えてしまいそうな声を聞き逃さなかった私は「…どんな時だって立ち直れない時なんてないと私は思います」と切り出して話を始めた。
「実は私…、このホテルに来てからはどの部署でも使いものにならないって邪魔物扱いされていたんです。辞めたいと何度も思っていました。けれども…バトラーという仕事に出会ってからは自分からアレコレ考えて行動出来る様になりました。それからは毎日が楽しいんです。…今までは想像出来なかった世界が広がって、暗かった道筋に光が見えました」