本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
穂坂様にも前に進んで欲しいと言う気持ちだけで、失礼極まりないのは承知で淡々と思い付いた事を述べてしまった。こんな事を聞かされても鬱陶しいだけかもしれないけれど……。

「光、か…。俺にとっては、明日美(あすみ)だったな…」

あ、私は余計な事を言ってしまったかもしれない。逆効果だったかもしれない。あすみさんを思い出させてしまった!

「俺は…人気俳優だとかって騒がれても、心が寂しくて人恋しくて…女をとっかえひっかえ抱いたりしたけど…、そんな時に明日美に出会ったんだ。良く行ってたバーの女バーテンで一般人だった。俺から恋をして、他の女とも縁切りしてから付き合う様になったけど…時間も合わなくて、独り占めしたくなって結婚しようと思ったんだ…」

「……なるほど、あすみさんは一般人なんですね」

「そうなんだ。あすみは大学の奨学金を返すために昼は会社、夜はバーテンしてたんだ。俺が請け負うよって言ったんだけど…嫌だって…」

穂坂様とあすみさんとの馴れ初めを聞いていた時に部屋の扉がバンッと勢い良く開いた。

ジャケットとブラウスのボタンがちぎれてしまっていて、ガウンにくるまっている状態の私はベッドから動けずに三角座りをして話を聞いていた。部屋に飛び込んで来たのは、一颯さんと高見沢さんだった。

「…しの、…お前、何かされたのか?」

私の哀れな姿を見て一颯さんが驚きを隠せずに駆け寄って来た。
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